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仕事柄か、年のせいか、早起きの癖がついた。この時期、東京だと4時ごろから空が白んで鳥が鳴き始める。散歩もせずにパソコンに向かう当方を含め、日本に暮らす人の多くが早朝の明るさを無駄にする▼きょうは一年で昼が最も長い夏至(げし)。日の出から日の入りまで、東京で14時間35分、北海道ではさらに50分ほど長く、朝日の無駄も極まる。日没(にちぼつ)はまだ少し延びるが、それ以上に夜明けが遅くなっていく▼高い緯度の国々は、夏が短い代わりに日照(にっしょう)時間が長い。夏至祭の頃の解放感はひとしおらしい。「夜の空は薄紫のヴェールを下ろしたように広がり、太陽は樅(もみ)の森の彼方(かなた)に隠れて、その残光(ざんこう)で金色に染まっている。白夜(はくや)である」。外交官(がいこうかん)として北欧(ほくおう)が長かった武田龍夫さんの描写だ▼夏至には火を囲み、短夜(みじかよ)を踊り明かす風習が欧州各地にあった。太陽の威勢(いせい)を借りて、万物に精気を満たす営みであろう。はじける喜びは長くて暗い冬の反動で、人々は当然の権利のように、暮れぬ夕べを無駄なく楽しむ。〈路面チェス数人かこむ白夜かな〉森田峠(とうげ)▼前後に春秋(しゅんじゅう)という優しい季節がたっぷりあるためか、日本では夏を待ちこがれ、いとおしむ心情がピンとこない。省エネを言いながら、みすみす朝の光を捨てる我らである▼夏時間を採り入れても、戸外での余暇に慣れぬ身は帰宅後の斜陽を持て余そう。いや、働き蜂は暗くなるまで帰らないから残業を増やすだけ、との見方もある。ああ、勤労観の壁。夏至と同居の父の日、「お天道様が高いうちは……」の呪縛をふと思う。  http://www.asahi.com/paper/column20090621.html 

単語

当方(とうほう)①

こちら。自分の方。

ひとしお

染物を一度染め液に浸(ひた)すこと。魚などに薄く塩を振ること。

ヴェール

女性の顔や頭を覆う薄い布やネット。面紗。

営み(いとなみ)0④

行為。生活のための仕事。

はじける(弾ける)③

中身が膨張して割れる。

チェス 西洋棋

こがれ(焦がれ)③

(動詞の連用形に付いて)苦しくなるほどにその気持ちを強くもつ。

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